Towser(タウザー)

Towser 

ギネスブックが認定する「世界一のタウザー」とは?

ウィスキーがお好きな方ならご存知かもしれない。
蒸留所で飼われているネコのことを「ウィスキーキャット」または「ディスティラリー・マウザー」、略して「DM」ともいう。彼らに課せられたミッションは、穀物を大量に貯蔵している蒸留所のネズミを捕らえること。なんだか、”I’m Bond. James Bond. Code number is 007.”とおなじみのセリフで英国紳士ジェームス・ボンドがスパイとして活躍する映画の世界のようだ。そして、かつてDMのジェームス・ボンドがスコットランドのウィスキー蒸留所『グレンタレット蒸留所』にいた。それが、雌猫のタウザーである。彼女が生涯に捕らえたネズミの数は、2万8,899匹。一日あたりで計算すると、実に4匹近くを捕らえていることになる。それも24年近い生涯にわたって一日も欠かさず捕り続けたとしてなのだから、実に働き者である。

「称えられる栄光」の陰には、必ず優れた協力者の存在がある。
ギネスブックも公認する世界一のマウザーであるタウザーの場合、それは『グレンタレット蒸留所』の職人だった。タウザーには妙なクセがあって、捕らえたネズミを毎日所定の場所に置いていったのだという。それを職人がせっせと毎日ノートにつけていたのだそうだ。それが、タウザーの功績を不動のものにした。よかったね、タウザー。

ヨコハマ関外「よしだまち」は”バーとアートの街”だが、野毛からイセザキに向かう回廊のような区画にバーを初めとする飲食店が約80店舗ほどクラスターをつくっているエリアである。その中でも、一番の古参として知られるバーが『Towser』だ。そう、あのウィスキーキャットと同じ名前の看板のお店で、スコッチウィスキーの数だけで実に400種類は揃えている。バッハ等のバロック音楽が、似合いそうな静かな光を湛えたような空間である。

ふと目線を上げると、イタリア系ボトラーのムーン・インポート社のボトルが並んでいる。イタリア高所得者のモルトマニアやコレクターに人気が高く、品質の高さは勿論のこと芸術性の高いラベルデザインが特徴的な希少性の高いウィスキーだ。『Towser』でお酒をいただきながら、ボトラーズのラベル鑑賞を楽しむ夜があってもいい。

「ごちそうさま、美味しかった、またくるね。そんな風にお客様と重ねていく時間が、とても大切なんです。」

お酒のことがよくわからなくても、大丈夫。オーナーの金田さんやお店の方達に聞けば、すぐになんでも教えてくれる。女性だけで遊びに行っても安心安全なバーとして、「行きつけのお店リスト」に加えておきたい。そんなバーである。


[2018年]Towserの「ローズのおもてなしの一杯」
ローズメイデン(Rose Maiden


薔薇は、古代より地母神の象徴とされてきた。
処女性、母性、結実、再生、永遠なる性。
それは私たち人間の「生きること」の永遠の営みであり、誕生と終焉の輪廻の象徴のようでもある。

ローズメイデン(Rose Maiden)。
薔薇の乙女を意味する、ロマンチックな一杯だ。
ブルガリアンローズ・ウォーターの薫りが心地よく鼻孔をくすぐり、イチゴの甘みが、遠い昔の初恋を想起させる。
実はイチゴはバラ科で、花言葉は「甘い乙女心」なのだそうだ。
『赤毛のアン』の小説にでてきたイチゴ酒は、こんなお酒だったのかも。

男性がいつまでも夢を追いかける少年のままでありたいと思うように、女性もいつまでも夢をみつづける少女のままでありたい。
そんな浪漫を引き寄せる香りを、今日は特別に楽しもう。

ところで、ウィスキーキャットのタウザーは、偶然にもエリザベス女王2世と誕生日が同じ4月21日一緒だった。奇しくも最後となってしまった1986年のタウザー23歳の誕生日に、蒸留所のスタッフによって、エリザベス女王へ ”同じ日に生まれたグレンタレット蒸留所ウイスキーキャット タウザー” とのタウザー名義でバースディカードが送られている。これを受けたエリザベス女王はタウザーを人間の年齢に換算して、「161歳の誕生日おめでとう」との旨が記された返事を送ったという。このユーモアセンス、とても秀逸。

「もし、私にユーモアがなければ、これほど長く苦しい戦いには耐えられなかったでしょう」
インド独立の父・ガンジーの有名な言葉だが、詰まるところ、「ユーモア」とは夢をみつづけ、追いかけつづけるための「大人の浪漫」なのかもしれない。

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