いちばんたいせつなことは、目に見えない
心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ。
― サン=テグジュペリ『星の王子さま』より引用
フランスで職業飛行士として活躍する傍ら、小説家としても数多くの名著を遺したアントワーヌ・サン=テグジュペリ(1900年~1944年)。当時の飛行操縦は命がけ、世界大戦の空をも飛ばなければならない死と隣り合わせの日々の中で、悔いのないように精一杯、人生を最高に豊かな人生を駆け抜けたということが想像できる名言を数多く遺しています。
冒頭はサン=テグジュペリがサハラ砂漠に不時着したときに着想を得て執筆した不朽の名作『星の王子さま』の一節で、キツネが星の王子さまに伝えたキーメッセージです。あまりにも有名なので、ご存知の方も多いと思います。
地球にやってきた星の王子さまは数えきれないほど咲いている地球の赤いバラと出会って、最初はとても落胆します。自分の星に残してきた、わがままで手がとてもかかるけれど一生懸命にお世話をしてきた赤いバラが、決して珍しい花ではなかった。そう考えたのです。そこに現れ、星の王子さまに真理の智慧を授けるのがくだんのキツネで、持つべきものは友といったところでしょうか。
きみのバラが、きみにとってかけがえのないものになったのは、きみがバラのために費やした時間のためなんだ。人間は、このたいせつなことを忘れているんだよ。尽くしたものに対しては、いつまでも責任があるんだ。守らなきゃいけなんだよ。
星の王子さまはキツネからのキーメッセージを受けとって、気づきます。いくらほかにたくさんのバラがあろうとも、自分が美しいと思い、一生懸命お世話をしたバラはやはり愛おしく、自分にとって一番のバラなのだと。
サン=テグジュペリは自由に大空を翔けることを心から愛する飛行士らしく、高みからものごとを俯瞰する大きな視点を持った人物だったようです。彼は、こんな言葉も遺しています。
本当の贅沢というは、ただ一つしかない。
それは人間関係の贅沢のことだ。
アメリカのハーバード大学で発表された75年間もの時をかけて調査研究を積み重ねた『幸せの研究』の結果は、とてもシンプルなものでした。
健康で幸福な人生を送るのに必要なのは「富」や「名」ではなく、「がむしゃらに働く」ことでもありません。「良い人間関係」を築くことです。それこそがもっとも大きな幸せの要因なのですー。
サン=テグジュペリの飛行機は、最後は戦争さなかの偵察飛行中に敵方に撃墜されてしましました。
44歳の若さでした。それでも、彼が本当の贅沢を知っていたという点に於いて、彼は短くとも幸せな人生を送ったといえるのではないでしょうか。
私たちの「いのち」すなわち「時間」は、決して無限に続くわけではありません。
大切なひととの人間関係に感謝の気持ちを忘れないように、人間関係の贅沢を楽しむことができるように。
赤いバラの花を一輪、大切なひとにサプライズでプレゼントしてみるのも素敵ですね。