「知る」ことは、「感じる」ことの半分も重要ではない
もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目を見はる感性)」を授けてほしいとたのむでしょう。
この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤となるのです。
― レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』より引用
1962年に歴史的著書『沈黙の春』を刊行した米国のベストセラー作家であり、海洋生物学者であったレイチェル・カーソン(1907-1964)。世界で初めて化学物質が環境と生態系に与える危険性を告発。この本をきっかけに、アメリカ政府はDDT(有機塩素系の殺虫剤、農薬)の使用を禁止する法律を制定するなど、国家をも動かすインパクトを全米に与えました。化学産業界を初めとする多くの企業や団体からの圧力や告訴の脅しに屈することなく、環境の危機と人類への健康被害について訴えた彼女の勇気ある行動は、後のアース・デイ(地球について考える日)や国連人間環境会議のきっかけとなりました。
そんな彼女の遺作となった、『センス・オブ・ワンダー』。
時を超えていまも尚、私たちに「いのちのつながり」の大切さについて、優しく語りかけてきてくれます。
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない。
彼女は、そう説きます。
子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この趣旨をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子供時代は、この土壌を耕すときです。
美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知のものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。
おとなも、子どもも、センス・オブ・ワンダーに満ちた毎日を過ごすことができたなら。
きっともっと楽しく、豊かで、幸福感の高い時間を過ごすことができる。そう思いませんか?
人生100年時代といわれる現代だからこそ、大切にしたい感性です。